平成30年度の外来患者総数は5,418名(初診 112名、再診 5,306名)、うち4割強の方がインスリン療法を行っておられます。外来には糖尿病療養指導士の資格を有する看護師が常駐し、治療状況の把握や療養指導に努めています。外来でのインスリン導入や自己血糖測定指導も可能です。
病棟にも糖尿病療養指導士の看護師が配属され、治療サポートの他、管理栄養士、薬剤師、理学療法士・作業療法士とも協力して1週間の糖尿病教室スケジュールを組んでいます(表1)。平均の入院日数は約20日で、入院理由については教育や治療の強化が半数強を占めています(図1)。次いで手術前の血糖管理です。周術期は種々のストレスで血糖が上昇しやすく、創部の感染や回復の遅れにつながるため、内服から短期的にインスリンに切り替えるなど治療の強化が必要となるためです。
2017年に発表された厚生労働省の調査では糖尿病の患者数は1000万人に達し、成人の10人に1人が糖尿病となりました。患者の平均年齢も65.57歳と社会全体の高齢化に伴い、高齢化が進んできているところです。
高齢者糖尿病の特徴として、① 口渇、多飲などの症状が出にくい、② 筋肉量の減少や膵臓からのインスリン分泌低下に伴い食後高血糖が顕著である、③ 腎機能低下による薬剤の蓄積などから低血糖を来しやすい、④ 三大合併症( 網膜症、腎症、神経障害)に加え、脳梗塞、心筋梗塞の頻度が高いなどが挙げられます。
当科では患者さんに糖尿病連携手帳(図2)を配布し、血液検査の記録に留まらず、眼科受診、腎機能検査(尿タンパク・アルブミン定量)、心電図、頚動脈エコー、血圧脈波検査などの合併症チェックに漏れがないか、確認作業に力を入れているところです。
糖尿病の原因はインスリン分泌低下とインスリン抵抗性(肥満や運動不足、筋肉量減少などによるインスリンの効きにくい状態)の2つに大別されます。
後者が主体の場合、食事や運動療法が大切なのはもちろんですが、最近では尿糖から糖を排出させ、体重を軽減するなどユニークな薬も出ており、種々の薬をうまく使用することで低血糖を回避しつつ良好なコントロールを得ることが可能となってきています。GLP-1受容体作動薬といって注射剤ではありますが、1日1回もしくは週1回の使用でインスリン分泌を高め、かつ体重も抑制するという利便性の高い薬剤もあります。
一方でインスリン分泌低下が強く、内服薬のみで改善に乏しい場合はインスリン療法を検討することになります。始めたら一生続けないといけなくなる、膵臓が怠けてだめになるなどと言われる方がいますがこれは全くの誤解です。インスリン分泌低下とは膵臓が“ 息切れ” に陥った状態ですので、インスリンを注射で補った方が膵臓の負担軽減につながります。使用後内服治療に戻り、そのまま好調を維持する方もおられます。インスリン分泌が枯渇に至っていなければ、内服薬を併用してインスリンの単位数や注射回数を減らすことも可能です。
糖尿病は日頃の症状に乏しいため油断しがちですが、いざ合併症が出現すると大変なことが多く、日常生活の質の低下に直結します。川薩地域の糖尿病専門医として、皆様の健康維持・増進に貢献できるよう頑張っておりますので、今後も何卒宜しくお願い申し上げます。