手術支援ロボット、ダヴィンチによる手術は、従来の腹腔鏡手術にロボットの機能を組み合わせた手術であり、より精密で低侵襲の手術を行うことが可能となりました。ダヴィンチは1999年にIntuitive Surgical社から販売が開始され、2023年1月時点で世界70カ国、7500台が稼働しています。
「ダヴィンチ X」は2018年に発売となった最新型の第4世代手術支援ロボットです。細径化された内視鏡、関節機能を有する鉗子、高解像度の3D画像で精密な手術操作が可能となっています。
当院では2023年10月に、手術支援ロボット(ダヴィンチサージカルシステム)を導入しました。ロボット支援下手術は、従来の手術よりも緻密で複雑な操作を可能とし、また3次元による正確な画像情報を取得できるようになりました。ダヴィンチサージカルシステムは、ずでに国内で約500台が稼働しています。
当院の手術支援ロボットは、鹿児島市外の県内施設では初の導入となります。まず泌尿器科で前立腺癌に対する前立腺全摘除術に導入し、次第に適応を拡大していく予定です。前立腺癌に対するロボット支援下手術は、術後尿失禁の早期回復に寄与し、従来の腹腔鏡手術では難しい患者さんへの治療を可能としています。これまで以上に地域医療へ貢献すべく努めていく所存ですので、引き続き皆様のご理解とご協力のほど何卒よろしくお願い申し上げます。
泌尿器科・小児泌尿器科
主任部長 井手迫 俊彦
ダヴィンチは「サージョンコンソール(操作部)」「ペイシェントカート(ロボット部)」「ビジョンカート(映像カート)」の3つの機器で構成されています。術者はサージョンコンソールに座り、ビジョンカートで3D画像化された患部の拡大画像を見ながら手元のハンドルを操作します。ハンドルの動きはペイシェントカートの鉗子に正確に伝わり、まるで患部に両手を入れて鉗子を操作しているような感覚で手術を行うことができます。
術者が操作する機器です。術者はハイビジョン3D画像を見ながら自分でカメラを操作し、適切な手術部位を適切なズームで映し出すことができます。3本の鉗子も術者が操作します。自在に動く鉗子は360°以上回転し、手振れも補正されていますので、きわめて繊細な動きが可能です。開腹手術ではもちろん、従来の腹腔鏡手術でも不可能であった複雑で繊細な手術操作が可能になっています。
患者さんに接続する機器です。4本のアームを持ち、1本には精細な高画質の3次元カメラを接続します。残る3本のアームには、術者が操作するロボット専用鉗子を接続します。ダヴィンチXのアームは、より小さく、より細くなったため、可動域が広がり、干渉が少なくなっています。
ダヴィンチの中枢となる機器です。ペイシェントカートから送られてくる画像からハイビジョン3D画像を作成します。最大14倍までの拡大ズームが可能です。上部に搭載されているモニターには、サージョンコンソールで操作をしている術者と同じ映像が映し出され、手術スタッフも術中の様子をリアルタイムで共有できます。
数カ所の小さな切開部(右図)から手術を行うため、開腹手術(左図)より傷が小さく、出血も抑えられます。手術後の回復が早く、患者様の負担が軽減されます。
コンソールモニターには、高画質で立体的な3Dハイビジョンシステムの手術画像が映し出されます。患部を拡大視野でとらえるズーム機能により、今まで見ることのできなかった組織を認識することができ、より精密な手術が可能になります。
腹腔鏡よりも自由度の高い鉗子は、主に3つの部分に分かれており、それぞれ人間の腕、手首、指先のような役割を担います。組織をつまむ・切る・縫合するなど、医師の手の動きに連動して正確に細かく動きます。
傷痕を最小限に抑えられます
鎮痛剤使用量の低減、入院期間の短縮ができます
鉗子類には触覚がないため、術者には慣れが必要です。ダヴィンチの製造元であるIntuitive Surgical社の定めるトレーニングを終了し、認定資格を取得した医師が執刀します。
前立腺全摘除術では25°頭を下げた姿勢で手術を行うため、脳動脈瘤や緑内障の患者さんの一部はロボット支援手術を受けることができません。
以前に腹部手術を受けたことのある患者さんもロボット手術を受けることができないことがあります。詳細は担当医師にご相談ください。
お腹の中での手術操作は、従来の腹腔鏡手術と同じです。病状の進行具合や持病によっては、従来の開腹や腹腔鏡手術をお勧めすることもありますので、適応については担当医へ直接ご相談ください。
前立腺癌に対するロボット支援下手術は保険適用となっています。従来の腹腔鏡手術と比べ、患者さまの負担額にほぼ差はありません。